PFASってなに?私たちの暮らしにある化学物質について解説
- 博 田中
- 6 日前
- 読了時間: 7分
近年、「PFAS(ピーファス)」という言葉をニュースやSNSで見かける機会が増えました。名前だけではピンと来ないかもしれませんが、実はPFASは、私たちの身のまわりにある、さまざまな製品に使われており、知らないうちに生活に深く入り込んでいる化学物質です。
便利な生活を支えてきた一方で、PFASは「環境中で分解されにくい」「体内にたまりやすい」といった性質を持つことから、健康や環境への影響が懸念され、世界各国で問題視されています。
本記事では、「PFASとは何か?」という基本的な内容から、身近での使用例、人体への影響などを解説。PFASがなぜ問題視されているのか、そして私たちにできる対策についても紹介します。
PFASについて正しく知り、自分自身や家族の健康、そして環境保全につなげましょう。

PFASとは?
PFAS(ピーファス)とは、「Perfluoroalkyl and Polyfluoroalkyl substances(ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物)」の略称で、人工的に作られた有機フッ素化合物の総称です。PFASには数千もの種類が存在し、水や油、汚れをはじく性質を持っていることから、さまざまな製品に利用されてきました。
PFASの大きな特徴は、「極めて分解されにくい」という点です。
自然環境の中ではほとんど分解されず、長期間残り続けることから、「永遠の化学物質(Forever Chemicals)」とも呼ばれています。
また、体内に取り込まれた場合にも排出されにくく、少しずつ蓄積していく性質があります。
この特性により、PFASは環境や人体に与える影響が懸念され、世界的に規制の動きが強まっているのが現状です。
ただし、PFASはすべてがすぐに健康に悪影響を与えるわけではなく、その種類や濃度によってリスクが異なります。
特に注意したい「PFOS」と「PFOA」
PFASのなかでも、特に問題視されているのが「PFOS(ピーフォス/ペルフルオロオクタンスルホン酸)」と「PFOA(ピーフォア/ペルフルオロオクタン酸)」です。
これらは、長年にわたって日常で頻繁に利用される、さまざまな製品に使われてきました。
しかし、これらの物質は極めて分解されにくいだけでなく、体内に蓄積しやすいという性質を持っています。特に長期間にわたる暴露が懸念されているのです。
そのため、現在ではPFOSやPFOAの製造や使用が世界的に厳しく制限されており、日本でも法的に規制されています。ただし、過去に製造された製品や環境中に残っているものからの暴露リスクが今なお残っているため、注意が必要です。
PFOS・PFOAについてのより詳しい情報は、以下のページで詳しく解説しています。関心のある方はぜひ、そちらもご覧ください。
PFASが人体に与える影響
PFASは一度体内に取り込まれると分解されにくく、長いあいだ体の中にとどまる性質があります。少量でも長期間にわたって蓄積されていくことで、健康への影響が懸念されているのです。
これまでの研究で明らかになっているのは、PFASが血液中にたまりやすく、排出されるまでに時間がかかることがあるという点です。
体内に蓄積されたPFASは、肝臓や免疫系、ホルモンバランスなどに影響を与える可能性があるとされています。
特に子どもや妊娠中の女性など、体の発達やホルモンの変化が大きい時期にある人々は、影響を受けやすいとされており、注意が必要です。
とはいえ、すべてのPFASが同じように危険というわけではありませんし、日常生活の中で触れる量がすぐに健康被害につながるという証拠はまだ限られています。
また、PFOSやPFOAは体内に蓄積しやすいものの、摂取が減れば徐々に体外に排出されていきます。
必要以上に不安になるのではなく、「どのような製品に含まれているのか」「どんな影響があるとされているのか」といった基本的な知識を持ち、冷静に対応していくことが大切です。
PFASが使われている身近な製品
PFASという名前に聞きなじみがなくても、実は私たちの暮らしの中には、その成分が使われている製品がたくさんあります。
ここでは特に身近な代表例を紹介しますが、過敏に恐れる必要はありませんので、安心してください。
フッ素加工のフライパン
焦げ付きにくいフライパンとして人気の「フッ素加工フライパン」。
この表面加工に使われる物質の中に、PFASの一種が含まれていた過去があります。
これらは高温でも化学的に安定しているため、調理器具に適しているとされてきました。しかし、長期間の使用や高温での調理によってコーティングが劣化し、微量ながら成分が剥がれ落ちる可能性も指摘されています。
現在ではPFOAの使用が国際的に規制されており、日本国内でも2013年末に企業の自主的な取り組みとして、使用を全廃しました。
防水スプレー
靴や傘、衣類に使われる防水スプレーの中で、古いものにはPFASが含まれていることもあります。これらのスプレーは、素材の表面に皮膜をつくり、水や汚れをはじく効果を発揮するものです。
しかし、屋外や換気の悪い場所で使用した際に吸い込んでしまうと、まれに呼吸器に影響を及ぼすことがあるため、使用時には注意が必要です。
また、環境や健康への配慮から、近年は非フッ素系への切り替えが進んでいますので、新しく購入する製品であれば、安心して使用できるでしょう。
食品包装紙
油や水を通さない性質を活かし、ファストフードの紙包装やテイクアウト容器などの一部にもPFASが使われていることがあります。
たとえば、ハンバーガーを包む紙やピザの箱、ポップコーンの袋などです。
PFASが使用された包装は、食品に直接触れるため、体内に取り込まれる可能性もゼロではありません。
特に海外では、PFASを含む食品包装の安全性が問題視されており、規制を強化する国も増えています。また、日本国内でも、企業によっては使用成分の見直しが始まっています。
化粧品
意外かもしれませんが、化粧品にもPFASが使われていることも少なくありません。
特に、ウォータープルーフのマスカラやファンデーション、リキッドタイプの口紅などに使用されることがあり、肌への密着性や撥水性を高めるために添加されています。
一部のPFASは皮膚から吸収される可能性があるとされており、近年では、配合成分にPFASを含まない「フッ素フリー(PFCフリー)」や「ナチュラル志向」のコスメを選ぶ人も増えています。
成分表示を確認することで、ある程度の判断が可能です。
私たちが日常で気をつけたいポイント
PFASは完全に避けることが難しい化学物質ですが、日常生活の中でちょっとした工夫をすることで、体内への取り込みをできるだけ減らすことが可能です。
過度に不安になる必要はありませんが、以下のようなポイントを意識することで、より安心して暮らすことができるでしょう。
フッ素加工製品の使い方に注意する
フッ素加工のフライパンや調理器具は便利ですが、長く使うことで表面の加工がはがれやすくなり、PFASが食品に混入する可能性があるとされています。
もし、家に加工のはがれた古いフライパンがある場合は、早めに買い替えるのがおすすめです。
最近はPFASを使わないノンスティック製品も登場しているので、安心して使用できるでしょう。
食品包装にも気を配る
ファストフードやテイクアウト食品の包装紙、紙コップなどにPFASが含まれている場合があります。
すべてを避けるのは難しいものの、家庭では陶器やガラスなどの容器を使うことで、接触機会を減らすことができます。
特に、電子レンジで加熱する食品包装は、高温でPFASが溶け出す可能性もあるため注意が必要です。
たとえば買ってきたお惣菜は、お皿に移し替えて温めるなどの工夫をするとよいでしょう。
まとめ
PFASは、私たちの身近な製品に広く使われてきた一方で、分解されにくく体内や環境中に蓄積するという性質を持った化学物質です。
特にPFOSやPFOAのような一部のPFASは、健康や環境への影響が大きく、国際的にも厳しい規制が進んでいます。
一方で、すべてのPFASが同じように危険というわけではありません。特に日常生活の中で触れる量がすぐに健康被害につながる心配は少ないでしょう。
日常生活の中ですべてのPFASを避けるのは難しいものの、「どこに使われているか」「どのように付き合えばよいか」を知ることで、過度な心配をせずに、リスクを最小限に抑えることが可能です。
身近な製品の選び方や使い方を見直すだけでも、大きな一歩となるでしょう。
最近では、河川や井戸水から高濃度のPFASが検出されたことが話題になることも増えています。
もし「近くの水道水や井戸水にPFASが含まれていないか不安」「土壌や地下水の安全性を確認したい」といったお悩みがある場合は、専門の水質検査や環境調査をおこなっている当社にご相談ください。
皆様がより安心・安全な暮らしを送れるように、サポートしてまいります。
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