アスベスト調査は義務?義務化の背景や調査対象について徹底解説
- 博 田中
- 3 日前
- 読了時間: 7分
アスベスト(石綿)は、かつて耐火性や断熱性に優れた建材として広く使用されていました。
しかし、微細な繊維を吸い込むことで、重篤な呼吸器疾患を引き起こすことが判明し、規制が強化されています。
建築物の解体や改修工事においても、アスベストの飛散による健康被害が問題視され、2023年に一定の工事でのアスベスト調査が義務化されました。
ただ、「どのような建物が調査対象になるのか」「調査をしないとどうなるのか」など、具体的な内容を知らない方も多いでしょう。
本記事では、アスベストの基本的な知識から、調査義務化の背景、調査の流れなどを詳しく解説します。
適切な対応を行うためにも、アスベスト調査の必要性を理解し、安全な施工につなげましょう。
ぜひ最後までお読みください。

アスベストとは?
アスベスト(石綿)は、天然に産出される繊維状の鉱物で、「せきめん」や「いしわた」とも呼ばれます。
その繊維は、肉眼で確認するのが難しいほど非常に細かいです。
アスベストは耐熱性や耐久性、絶縁性に優れているため、過去には建築資材や断熱材、ブレーキパッドなど、さまざまな製品に広く使用されてきました。
しかし、アスベストの繊維が空気中に飛散し、それを吸い込むことで健康被害を引き起こすことが明らかになっています。
そのため、現在では多くの国でアスベストの使用が禁止され、既存の建築物においても適切な管理や除去が求められているのです。
アスベストの危険性
アスベストの危険性は、微細な繊維を吸入することによって生じます。
吸い込まれたアスベスト繊維は、体内で分解されにくく、長期間にわたり肺組織に留まります。
これにより、肺がんや悪性中皮腫、肺線維症(じん肺)などの深刻な疾患を引き起こすリスクが高まってしまうのです。
これらの疾患は、発症までに15~50年の潜伏期間があるため、過去にアスベストに曝露した人々が現在も健康被害に苦しんでいるケースが見られます。
アスベスト事前調査義務化の背景
アスベスト事前調査が義務化された背景には、長年にわたる健康被害の深刻化と、既存建築物におけるアスベスト使用の実態が影響しています。
日本では1970年代にアスベストの危険性が指摘され、1975年に一部使用が規制されました。
しかし、当時は認識が不十分であり、1990年代以降になってようやく健康被害の実態が明確になったのです。
2006年には、労働安全衛生法施行令が改正され、アスベスト含有率が0.1%を超える製品の製造や使用が全面禁止されました。
しかし、それ以前に建てられた建築物には、今もなおアスベストが含まれているケースが多くあります。
こうした状況の中、解体や改修工事による、アスベスト飛散のリスクが課題となっていました。
建材に含まれるアスベストは、通常使用時には問題ありません。
ただし、工事によって粉じんとなり空気中に拡散すると、作業員や周辺住民が吸い込む危険があります。
特に建設業界では、過去の曝露による健康被害が相次ぎ、年間約1,000件の労災保険給付が発生しており、現在も影響が続いています。
さらに、2021年5月の建設アスベスト訴訟において、国とメーカーの責任が認められ、アスベスト問題への対応を強化すべきという最高裁判決が下りました。
このような経緯で、2021年4月から一定規模以上の解体・改修工事でのアスベスト事前調査が義務化。2023年10月には、有資格者による調査が必須となるなど、より厳格なルールが適用されるようになりました。
アスベスト調査の内容
アスベストを適切に管理し、健康被害を防ぐために、解体・改修工事の前に専門的な調査を行うことが義務付けられています。
調査では、建材にアスベストが含まれているかどうかを確認し、飛散を防ぐための対策を検討します。
また、調査結果は行政へ報告し、一定期間保存する必要があることも知っておきましょう。
ここでは、アスベスト調査の対象と、調査を怠った場合の罰則について解説します。
アスベスト調査の対象
アスベスト調査の対象となるのは、一定規模以上の解体・改修工事や、一部の工作物に関する工事です。
以下の工事を行う場合、事前に建築物石綿含有建材調査者または石綿調査診断士の有資格者による調査が必要になります。
また、これらの工事では、事前調査結果を所管行政庁に報告する義務があります。
① 建築物の解体工事
床面積が80㎡以上の建物を解体する場合
②建築物の改修工事
請負金額が税込100万円以上の工事(壁や天井の補修、配管の交換など)
③工作物の解体・改修工事
請負金額が税込100万円以上で、煙突や発電設備、トンネルの天井板などの設備
なお、床面積80㎡未満の解体工事や、税込100万円未満の改修工事は、報告義務の対象外です。ただし、事前調査の実施や調査結果の保存は、小規模な工事であっても行う必要があります。
アスベスト調査をしないとどうなる?
アスベスト含有建材を適切に処理せずに工事を進めると、有害な繊維が空気中に飛散し、作業員や周辺住民の健康を損なうリスクが高まります。実際に、調査不足によるアスベスト飛散が原因で、健康被害を受けた事例も報告されているのです。
そのため、アスベストの調査や結果の報告に関しては、大気汚染防止法によって罰則が定められています。
調査や報告を怠った場合、3か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
さらに、アスベスト除去作業の基準違反や飛散防止対策の不備が認められた場合は、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることも。悪質なケースでは刑事責任を問われることもあるため、適切な対応が不可欠です。
アスベスト調査の流れ
アスベスト事前調査は、工事を安全に進めるために重要です。
ここでは、それぞれのステップについて説明します。
なお、一般的な流れとしては、以下の手順が考えられますが、具体的な手順は状況により異なる場合があるので、事前に確認しましょう。
1.図面の確認・ヒアリング
最初に、建築物に関する書類を確認し、アスベストの使用有無を判断します。
具体的には、設計図書や確認申請書、改修工事の記録などを精査し、建築当時の資材の情報を確認します。
平成18年9月1日以降に着工した建物であれば、原則としてアスベストは使用されていません。そのため、事前調査はここで完了となります。
それ以前の建物の場合は、次のステップとして現場での目視調査を実施します。
2.目視調査
実際の現場で目視調査を行います。
この調査では、図面の情報と現場の状況が一致しているかを確認し、図面では判別できなかった部分についても詳しく調べます。
ただし、目視だけではアスベストの有無を確定することは難しく、図面と建材の整合性を確認するのが主な目的です。
古い建物では、図面と現場が異なる場合もあるため、追加調査が必要になることもあります。
3.分析調査
目視調査を行ってもアスベストの有無が判断できない場合は、専門の分析機関に依頼して詳細な調査を実施します。
石綿取扱作業従事者などの有資格者が現場で建材の試料を採取し、それを専門機関に送付してアスベストの有無を検査します。
この際、安全対策を適切に講じながら進めることが重要です。
4.調査報告
調査が完了したら、電子報告システムを利用し、労働基準監督署や建物を管轄する自治体に報告を行います。
報告には、書面調査、目視調査、必要に応じた分析結果などの情報を含める必要があります。
調査結果は3年間の保存義務があるので、適切に管理しましょう。
まとめ
アスベストは健康被害を引き起こす危険性があるため、解体・改修工事における事前調査が義務化されています。
調査を怠ると、罰則の対象となるだけでなく、作業員や周辺住民に深刻な影響を及ぼす可能性が高まります。
そのため、適切な調査を実施し、安全な環境を確保することが重要です。
当社においても、有資格者による、アスベスト事前調査を行っています。
まずは、気軽にご相談ください。
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