職場の安全を確保するうえで、作業現場の環境を把握することは欠かせません。
特に、粉じんや有害な化学物質が発生する場所においては、適切な作業環境の管理が重要です。
そこで、重要な役割を果たすのが「作業環境測定」です。
本記事では、作業環境測定の概要や目的について解説するとともに、測定項目や具体的な作業手順について、詳しくご紹介します。
大切な従業員の健康を守るために、作業環境測定について理解を深めましょう。
作業環境測定とは?
作業環境測定は、職場の空気状態や有害物質の実態を把握するために行われる調査です。
法令で定められた基準を満たしているかどうかを科学的に評価し、必要に応じて改善することで、安全で快適な作業環境を維持し、従業員の健康を守ります。
ここでは、作業環境測定とは何かについて詳しく解説します。
◯作業環境測定の概要
作業環境測定は、労働安全衛生法第一章第ニ条四において、以下のように定義づけされています。
作業環境の実態をは握するため空気環境その他の作業環境について行うデザイン、サンプリング及び分析(解析を含む。)をいう。 |
また、第七章第六十五条(作業環境測定)の中でも、以下のように義務付けられている検査です。
事業者は、有害な業務を行う屋内作業場その他の作業場で、政令で定めるものについて、厚生労働省令で定めるところにより、必要な作業環境測定を行い、及びその結果を記録しておかなければならない。 2前項の規定による作業環境測定は、厚生労働大臣の定める作業環境測定基準に従つて行わなければならない。 3厚生労働大臣は、第一項の規定による作業環境測定の適切かつ有効な実施を図るため必要な作業環境測定指針を公表するものとする。 4厚生労働大臣は、前項の作業環境測定指針を公表した場合において必要があると認めるときは、事業者若しくは作業環境測定機関又はこれらの団体に対し、当該作業環境測定指針に関し必要な指導等を行うことができる。 5都道府県労働局長は、作業環境の改善により労働者の健康を保持する必要があると認めるときは、労働衛生指導医の意見に基づき、厚生労働省令で定めるところにより、事業者に対し、作業環境測定の実施その他必要な事項を指示することができる。 |
具体的には、職場内や作業現場で発生する粉じん・有機溶剤・鉛・特定化学物質などの有害物質や、騒音・振動・温湿度などの物理的因子を測定し、濃度や影響を評価します。
測定は空気中の粉じん濃度を測るためにサンプリングを行ったり、化学物質の成分を分析したりと、専門的な知識や機器を使用して実施します。
これらのデータは、作業環境の安全性を判断する重要な基準です。
また、測定結果に基づき、環境改善が難しい場合には保護具や保護衣の使用を推奨し、労働者の健康を守る対策が講じられることもあります。
◯作業環境測定の目的
作業環境測定の主な目的には、以下の3つが挙げられます。
・労働者の健康被害を予防するため
有害物質や過剰な粉じん、騒音などに長期間さらされると、健康被害を引き起こす可能性があります。
作業環境測定を行うことで、そのリスクを科学的に評価し、予防策を考えることができます。
・職場環境の安全性を向上させるため
測定結果を活用して環境改善を行うことで、従業員が安心して働ける職場を作ります。
健康被害の予防だけでなく、職場全体の安全意識を高める効果もあります。
・法令を遵守するため
労働安全衛生法第七章第六十五条に基づき、特定の作業場では作業環境測定が義務付けられています。
作業環境測定を通じて、法令で定められた安全基準を満たしていることを確認し、法律を守る義務を果たします。
◯作業環境測定を実施する場所
作業環境測定を行うべき場所については、労働安全衛生法施行第二十一条にて、以下のように定められています。
第二十一条法第六十五条第一項の政令で定める作業場は、次のとおりとする。 一土石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じんを著しく発散する屋内作業場で、厚生労働省令で定めるもの 二暑熱、寒冷又は多湿の屋内作業場で、厚生労働省令で定めるもの 三著しい騒音を発する屋内作業場で、厚生労働省令で定めるもの 四坑内の作業場で、厚生労働省令で定めるもの 五中央管理方式の空気調和設備(空気を浄化し、その温度、湿度及び流量を調節して供給することができる設備をいう。)を設けている建築物の室で、事務所の用に供されるもの 六別表第二に掲げる放射線業務を行う作業場で、厚生労働省令で定めるもの 七別表第三第一号若しくは第二号に掲げる特定化学物質(同号34の2に掲げる物及び同号37に掲げる物で同号34の2に係るものを除く。)を製造し、若しくは取り扱う屋内作業場(同号3の3、11の2、13の2、15、15の2、18の2から18の4まで、19の2から19の4まで、22の2から22の5まで、23の2、33の2若しくは34の3に掲げる物又は同号37に掲げる物で同号3の3、11の2、13の2、15、15の2、18の2から18の4まで、19の2から19の4まで、22の2から22の5まで、23の2、33の2若しくは34の3に係るものを製造し、又は取り扱う作業で厚生労働省令で定めるものを行うものを除く。)、石綿等を取り扱い、若しくは試験研究のため製造する屋内作業場若しくは石綿分析用試料等を製造する屋内作業場又はコークス炉上において若しくはコークス炉に接してコークス製造の作業を行う場合の当該作業場 八別表第四第一号から第八号まで、第十号又は第十六号に掲げる鉛業務(遠隔操作によつて行う隔離室におけるものを除く。)を行う屋内作業場 九別表第六に掲げる酸素欠乏危険場所において作業を行う場合の当該作業場 十別表第六の二に掲げる有機溶剤を製造し、又は取り扱う業務で厚生労働省令で定めるものを行う屋内作業場 |
具体的には、以下のような場所が当てはまります。
製造業の現場(溶接や塗装作業が行われる場所)
建設現場(粉じんや石綿、騒音などが発生しやすい場所)
研究所・実験施設(薬品による有害物質が発生しやすい場所)
作業環境測定の項目と測定方法・評価基準
作業環境測定で行う項目は、測定場所ごとに異なります。
例えば、シンナーなどの有機溶剤を取り扱う場所では有機溶剤の濃度、工事現場などの音が大きな場所の場合は騒音レベルを測定します。
作業環境測定を行うべき場所と測定について、表にまとめました。
上記の中でも、多くの事業所が当てはまるのが以下の項目です。
①土石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じんを著しく発散する屋内作業場
③著しい騒音を発する屋内作業場
⑦特定化学物質を製造し、若しくは取り扱う屋内作業場・石綿等を取り扱い、若しくは試験研究のため製造する屋内作業場
⑩有機溶剤を製造し、又は取り扱う業務を行う屋内作業場
また、上の表のうち赤字で示した場所については、作業環境測定士が測定を行うように義務付けられているので、注意しましょう。
作業環境測定の流れ
作業環境測定は以下のような流れで行われます。
作業環境測定を検討されている企業様は、お気軽にご相談ください。
・お問い合わせ・ヒアリング
お客様からのお問い合わせをいただき、ヒアリングをおこないます。
ヒアリング後、作業内容や安全データシート(SDS)をご確認いただきます。
・お見積り
作業内容や測定日が決まりましたら、お見積りを出させていただきます。
現地にお伺いして、現場を確認することもあります。
・ご契約
お見積り等にご納得いただけましたら、ご契約となります。
もし疑問点等がございましたら、お気軽にお尋ねください。
・サンプリング・測定
作業環境測定士が法律に基づいてサンプリング・測定いたします。
・分析・解析
サンプリング・測定内容を持ち帰り、分析と解析を行います。
・報告
ご報告書といった形で、お客様に提出いたします。
まとめ
作業環境測定は、働く方の健康を守るために欠かせない検査です。測定で改善点を早期発見することで、適切な作業環境の整備ができます。
作業環境測定をご検討の際は、ぜひ弊社にご相談ください。
企業と働く方々の安心のために、パートナーとして寄り添ってまいります。
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