井戸水を日頃から利用している方にとって、井戸水の安全性は自分自身やご家族の健康と直結する重要な問題のひとつでしょう。自然の恵みを受ける井戸水ですが、地表の水が地下水に浸透する際、農薬や細菌、有害物質などが混入するリスクがあります。
また、地震や台風といった自然災害が発生すると、水質が大きく変化することも少なくありません。そのため、安心して利用するには、定期的な水質検査を行う必要があります。
しかし、どのような検査を行うのか、費用や頻度についての疑問を持つ方も多いでしょう。井戸水の水質検査を検討する際には、セルフで実施する検査と専門業者に依頼する検査の違いや、それぞれの方法のメリット・デメリットについても理解しておくことが重要です。
本記事では、井戸水の水質検査の必要性や具体的な検査方法、安全を保つための注意点をわかりやすく解説します。快適かつ安全に利用するための参考に、ぜひ最後までご覧ください。
井戸水の水質検査は必要?
井戸水を利用する場合、水質検査を行う必要があるかは、使用目的や規模によって異なります。
庭への散水や農作業用などに個人で使うケースでは、水質検査は義務ではありません。しかし、飲み水をはじめとした生活用水として利用する場合は、定期的な水質検査が強くすすめられます。
井戸水は地下から汲み上げられるため、地質や周囲の環境の影響を受けやすく、気づかない間に細菌や有害物質が混入している可能性も高いです。
特に、専用水道として井戸水を使用するケースでは、利用する人数や用途によって水道法に基づく厳格な水質検査の義務が発生します。
専用水道として利用する場合はもちろん、利用しない場合でも利用目的に合わせた適切な水質検査を実施することがおすすめです。
専用水道と水質検査の関係性
専用水道とは、101人以上が使用・居住する施設や、1日あたり20立方メートル以上の水を供給する場合に当てはまり、スーパーや飲食店などの商業施設や宿泊施設、各種学校などが該当します。
こうした施設で井戸水を利用する際には、消毒の実施や、水道法に基づいた水質検査、厳重な管理が必要です。
具体的にいうと、専用水道での井戸水利用が認められるには、水道法で規定された51項目の水質基準を満たすことが求められ、検査をクリアしている必要があります。
検査項目により水質検査がいろいろある
井戸水の水質検査には、さまざまな検査項目が存在します。飲用水としての安全性を確保するための最低限の検査から詳細な検査まで、用途や状況に応じたものを選択することが可能です。
井戸水を飲用水として新設した場合、水道法に基づく51項目の検査が推奨されており、これは微生物から重金属、化学物質まで幅広い物質の検出を目的としています。
この検査を行うことで、より精密に水質の状態を把握できるため、安全性の確保には最適です。
一方、生活用水として使用する場合には、それよりも項目の少ない水質検査を行うこともできます。11項目から実施可能で、項目数が増えるほど、高い安全性を確認できます。
井戸の深さ(浅井戸か深井戸かの違い)によって、影響を受ける程度が異なるため、検査項目を選ぶ際には水源の特性や環境も考慮すると良いでしょう。
井戸水の水質検査を行う理由
井戸水は貴重な水源として多くの家庭や施設で利用されていますが、安全性には注意が必要です。
ここでは、井戸水の水質検査を行う理由を3つ解説します。
井戸水の安全性は設置環境によって異なる
井戸水の水質は、設置環境や使用状況により異なります。
地下水を水源とする井戸水は、地表からの雨水や農薬、肥料などが浸透することで影響を受けやすく、特に浅井戸の場合は地表の環境の変化がそのまま水質に反映されるリスクが高いです。
また、農業地域では農薬や肥料の成分が流れ込んだり、都市部や工業地帯の近くでは化学物質が浸透したりといった可能性も考えられます。さらに、台風や大雨、地震などの自然災害の後には、地下水の流れが変わり、水質が悪化することもあるため、こうしたタイミングでは特に注意が必要です。
使用頻度や気温によって水質が変化する
井戸水の使用頻度は、水質に影響を与えます。
長期間使用していない井戸では水が滞留しやすく、細菌やカビが発生しやすい環境となります。そのため、これまで頻繁に使われていなかった井戸を再び使用する際には、水質検査を行うことで安全性を確認することが重要です。
さらに、井戸水は気温の変化によっても水質が変化することがあります。特に夏場は細菌の増殖が懸念されます。
定期的な水質検査を行うことで、水質の悪化に気づくことができるため、安全性を確保しやすいです。
水道法による水質検査の義務
水道法に基づく水質検査では、51項目にわたる厳密な基準が設定されています。
水道法(昭和32年6月15日法律第177号)(抜粋) (水質基準) 第4条 水道により供給される水は、次の各号に掲げる要件を備えるものでなければならない。 一 病原生物に汚染され、又は病原生物に汚染されたことを疑わせるような生物若しくは物質を含むものでないこと。 二 シアン、水銀その他の有毒物質を含まないこと。 三 銅、鉄、弗素、フェノールその他の物質をその許容量をこえて含まないこと。 四 異常な酸性又はアルカリ性を呈しないこと。 五 異常な臭味がないこと。ただし、消毒による臭味を除く。 六 外観は、ほとんど無色透明であること。 2 前項各号の基準に関して必要な事項は、厚生労働省令で定める。 |
この基準において、水道水として利用するためには、大腸菌や細菌類、重金属(鉛、カドミウムなど)、化学物質(トリクロロエチレン、クロロホルムなど)といった人体に有害な成分が含まれていない必要があります。
さらに、水道法第22条では消毒管理も求められており、井戸水の品質が劣化しないよう、浄水や消毒設備の設置が義務付けられています。
この水質基準は一度の検査で終わりではなく、定期的に見直して検査を継続することも重要です。特に飲むために使用する井戸水は、年に1回以上の検査が基本で、専用水道の場合にはさらに厳格な管理が必要になります。
水道法に基づいた水質検査を実施することで、利用者が安心して井戸水を使用できるようにし、健康への被害を防いでいるのです。
井戸水の水質検査方法
井戸水の水質検査方法は、自分で手軽に行えるものから専門機関に依頼する方法までさまざまです。
ここでは、代表的な3つの検査方法を紹介します。それぞれのメリットと注意点を知り、自分の目的や利用頻度に合わせた方法を選びましょう。
1.自身で水質検査キットを購入する
市販されている水質検査キットを使えば、自宅で簡単に検査ができます。多くのキットは、pH値や亜硝酸濃度、硬度といった基本的な項目の測定が可能で、結果もすぐに確認できるため便利です。
しかし、一般的なキットでは一部の有害物質の検出が難しいことがあるため、簡易的な確認として利用するとよいでしょう。
特に飲用水としての安全性を確認したい場合は、専門機関での精密な検査も検討することが大切です。
2.地方自治体・保健所などに依頼する
地方自治体や保健所では、井戸水の水質検査を受け付けている場合があり、格安または無料での検査が可能なこともあります。
特に一般家庭で飲むために井戸水を使用する場合、保健所が推奨する検査項目に沿った検査を受けることで、安全に使用できるか確認できるでしょう。
ただし、自治体によって対応や検査項目が異なるため、事前に確認が必要です。
また、検査結果が出るまでに多少の時間がかかることを考慮しましょう。
3.水質検査を専門としている民間業者に依頼する
より精密な検査を希望する場合は、水質検査を専門とする民間業者に依頼するのも良いでしょう。
民間業者は、細菌や有害物質を含む詳細な検査項目に対応しており、飲用に適した水質かどうかをしっかりと確認できます。
また、迅速な結果提供やサポート体制も充実しているため、急ぎの場合や専門的な分析が必要な場合に適しています。
費用は自治体よりも高額ですが、安全性を重視したい場合には一番確実な方法です。
井戸水の水質検査を自分で行う際に気を付けること
水質検査を自分で行う際には、市販の検査キットを使用する場合がほとんどです。
検査キットを使用する場合は、まず測定項目と精度を確認しましょう。
一般的なキットでは、pHや硬度などの基本的な数値は測れますが、細菌や有害物質については対応していないことが多いため、健康に直接影響する飲用や調理用の水として使用する場合には限界があることを理解しておく必要があります。
また、検査の際は、井戸水をくみ取る容器の清潔さにも注意が必要です。容器が汚れていたり、採水時に異物が混入したりすると、正確な結果が得られない可能性があります。事前に採水容器をしっかり洗浄したうえで、慎重に採水しましょう。
検査キットを使用しての水質検査は、あくまで簡易的なものという認識も忘れてはなりません。自身の解釈のみで、基準値や安全な範囲を理解せずに判断するのは危険なため、わからない場合は自治体や専門機関に相談すると安心です。
まとめ
水は私たちの生活に欠かすことのできないものであり、直接体内に入るものでもあります。そのため、井戸水を生活用水として使用する場合も、安全性にはしっかり注意を払うことが必要です。
水質検査を定期的に実施することで、井戸水の安全性を確認し、安心して利用できる環境を整えましょう。
当社では、16項目までの採水・水質検査が可能です。
井戸水の安全性が気になる方や、最近水道から出る水に違和感があるという方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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